「別れのブルース」のできるまで。後編
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さて、この「別れのブルース」ですが、昭和12年のオリジナル盤は、われわれが近年テレビなどで聴き馴染んだものよりも、随分テンポが速いです、倍ぐらい速いです。軽快感さえあります。

リンクはいたしませんが、YouTubeにいくつか置かれているようです、オリジナルも上げられているみたいなので、聴きくらべてみる、なんてのはいかがでしょう。

なぜこんな事をいうておるのかともうしますと、

カーテンです。

今日はこれだけしかないもので。

風になびかせます、夜風汐風 恋風乗せて、です。
できるだけ窓の外を見せたいので透かせました。

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下の空いたスペースに段差とフロアを作ります。
彼女のいるテーブルから二段ほど下がってダンスの出来るフロアがあるわけです。

この曲の歌詞は2番までしかありませんが、それぞれの最後のフレーズが「踊るブルースのせつなさよ」で共通しています。
これは藤浦洸が手を抜いたわけではなく、この歌において重要なる一節なのであろう、ということで、踊る、ブルース、の切なさ、的な物を込めたいな、と思っているわけで、それがこのダンスフロアという事です。
よろしいか。

彼女と壁の間にカーテンが入った事で、壁を赤系に出来ました。
どうでしょうか。
もう、紆余曲折でございます。

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さて、窓の向こうに港が見えますよ。
だいたいこんな真横から見た構図で、窓から港など見えるものでしょうか。
などという事を考えてはいけません。
見えます見えます、見えますとも。

船が泊まっていればそこは港、ということでこういうものを作りました。

とりあえず船、街灯、あとなんか建物風。
これを組み合わせまして、さらにモヤの様なものを加えます。

どうでしょうか、メリケン波止場の灯が見える。

窓枠と彼女の頭にあわせて配置を調整。

人物を入れました。
男性の後ろ影。
この人が今別れた男なのでしょうか。
あのやくざに強いマドロスなのでしょうか。
ちなみにここで言うやくざに強いとは、ヤクザの人達に強いというよりも、いわゆるやくざ事、荒事などに強い腕っ節を持っている、という様な意味であるとも言われています。

彼の残した煙草の煙も入れました。

フロアにバラの花を落としました、特に意味はないです、なんか下の方が寂しかったので。
いりますかね。

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さてさて、ようやく素材が揃いましたね。
あとはちょいとした処理や修正をほどこしますよ。

柱や窓枠、やっぱり色をちょっと暗めにしました。

花瓶の台も。

部屋全体を暗くしますよ。

本来はPhotoshopに持っていって処理をすれば簡単ですが、今回はIllustratorだけで最後まで出来ないかやってみましょう。

不透明マスクで暗い色を中心からぼんやりと丸く抜きます。
これで全体を覆いますと、

中央が明るく、まわりが暗くなります。
テーブルランプと壁灯をマスクの前に出して、明るさをだします。

どうでしょうか、なんかまわりがぼんやりとくすんでしまいました。

次回はもう一案、二枚重ね透かし法をためしてみましょう。

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画像全体をコピーして、全体を暗くし、一部を透明で抜いて重ねてしまうという方法。


この丸グラデーションを透明マスクにして

白い部分が抜けますので

重ねますと、こういう感じになります。
先の方法より暗い部分がクリアです。
ただ当然データ量は二枚分になってしまってムダに重いし、印刷する時が不安です。

これはPhotoshopに持っていって、丸グラデーションでアルファチャンネル選択して露光調整したもの。
ちょっと暗くしすぎましたが結局これがいい感じでした。
素直にフォトショ使とけということでしたか。

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さて、Illustratorだけで最後まで、という意気込みは簡単に挫折したわけですが。
とにかくうまく出来れば良いわけですから、そんな事気にしないきにしない。

それでは、いつものように微修正をして終わりにしますよ。
今回はモロモロの微修正とは何か、という事を修正した理由とともに全部示しておきましょう。
すぐ上の画像からの変更点です。

テーブルクロスの明るさとひだの具合(クロスだけ浮いてる様な気がした)
窓枠の色(女性の腕と重なってわかりにくい)
向かいの椅子の位置(後ろの花瓶台の端とイスの端が重なって前後関係がわかりにくい)
港の男の色合い(頭の所が背景のいろとなじんでわかりにくくなってしまった)
船と港の建物の窓明かりをぼかした(こちらはぼんやりとなじませるため)
フロアをずらす(当初市松模様を縦三段見せる予定が作業途中にずれてしまっていた)
バラの花びらの位置と色(なんか並んでたのでばらした)
女性の髪の毛の具合(なんかしっくりいかないので)
女性の靴(靴とベルトの関係が曖昧なので)
全体的な明るさ(ちょっと暗すぎた)

というようなところです。

気になる所を捜せばきりがないのですが。
ええいもう、これでいいやっ!と叫んだ時が完成地点ということです。

別れのブルース

ということで、もうこれでいいやっ。

ありがとうございました。

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追記 2010年5月

その後最終的な暗がりの部分、Photoshopの露光調整でやっていた所を、Illustratorの不透明マスク乗算がけ、という方法をとってやってみました

それがこれなんですけど
何だかこれでいいような気がします
Photoshopの方が正解というわけでもないですからね

ともかくIllustrator一本で完成させるという当初の目的が果たせました

この方法の詳しい事は、ブログの方に「Illustratorで照明効果」という記事を載せようと思います

 

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