絵本昭和の流行歌 番外編

庭の千草
さて、「庭の千草」ですが、
これはもう皆さん何度となく聴いた事がある、おなじみの歌だと思います。

私はこの歌が好きなんですが、皆さんはいかがでしょうか?

ところでこの歌は流行歌ではありませんね。

昭和の歌でもありません。

明治17年に文部省によって採用された小学唱歌です。
当初は「菊」という題であったらしいですが。
以来120年以上歌い続けられている国民的愛唱歌であります。

そんななか、今回聴いてみるのは、昭和9年に発表された関屋敏子歌うところの「庭の千草」でございます。

関屋敏子、ご存知でしょうか。
若い人は聞いた事がないかもしれませんね。

この人は昭和戦前期に大変活躍された声楽家で、いわば本邦における元祖歌姫ともいえる人物なのです。
まあ詳しく知りたい人は自分で調べてね。

先ほども申しましたが、この「庭の千草」は現在でも多くの人が歌っています。
童謡唱歌のコンピュレーションなどには必ずと言っていいほど入っておりますし、また声楽系の女性などがソロのコンサートやアルバムを出す時にもよく歌われます。

声楽の人は楽譜に忠実に歌われるからでしょうか、最近録音された物(ここで言う最近とは戦後というぐらいの事ですが)は、概ね明治17年発表の唱歌オリジナルの旋律に則して歌われているようです。
まあ当たり前なんですけど。

しかしこの、昭和9年の関屋敏子の盤は、趣を異にします。
聞き所は、「ああ白菊、ああ白菊」と伸ばす所、最後の「ひとの操も」の所の高音などです。
実はこういった部分は関屋敏子だけでなく、この時代に出された「庭の千草」の特徴なのかもしれません。

なんとこの歌は昭和3年から15年にかけて少なくとも12枚のレコードが出ているんですけど(これはやっぱり流行歌?)もちろん全部聞いたわけではないので解らないのですが、昭和4年に出された関屋敏子の師匠である三浦環の盤や、昭和15年の同門である小林千代子の歌では同じように高音の入った歌い方をしているようです。

この歌の原曲は、The Last Rose of Summer (夏の名残りの薔薇)という歌で、こちらの方も欧米において時代を超えて歌い続けられておりまして、聴いてみると海外では今も昔も最後の高音が入っているようです。
もしかするとこの時代のひとは、明治に唱歌として作られた楽譜よりも、外国の人たちが歌っている方をスタンダードとして取り入れていたのかもしれないですね。

まあ私の言う事などいいかげんな話なので、興味のある人は詳しい人に聞いてね。

ちなみに、この関屋盤は発売の前年パリにおいて録音された物だそうです。
2テイクあって、先に録った物が高音の伸びが良いと言われています。

ところで、

この歌を、ここで聴いてもよいのでしょうか?

この曲はアイルランド民謡とされていますが、作曲者は、ジョン・スティーブンソンという人で、1833年に亡くなっています。
原曲の詞は、トマス・ムーアという詩人で、1852年に亡くなっています。
日本の歌詞を書いたのは、里見義(ただし)という人、1886年に亡くなっています。
関屋敏子さんは、1941年に、37歳で自ら命を絶たれています。
レコードを出した「日本ビクター蓄音機」という会社はもちろん亡くなってはおりません、曲折を経て現在の日本ビクターであります。
そこから出版されて74年が経過しています。

さて、この曲をここで聴いても良いのでしょうか。

もし良くないのであれば、
「よろしくないですよ」と、優しくご一報ください。
早急に対処いたしますゆえ。

他の選択肢としては「内緒にしておく」というのもございますれば。

というわけで、

 

 

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